自閉症スペクトラムという言葉をご存じでしょうか。近年では発達障害が注目され、自閉症スペクトラムへの理解も広まってきています。しかし一方で上手な付き合い方がわからなくて困っているという方も多いことでしょう。
今回は子どもたちの正しい支援のために、自閉症スペクトラムの特徴と対応を学んでいきましょう。
ASD(自閉症スペクトラム)とは?
「自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder(ASD)」とは、自閉症、高機能自閉症(知的な遅れを伴わないもの)、アスペルガー症候群、レット症候群、小児崩壊性障害、特定不能な幅広い広汎性発達障害を含んだ総称です。
症状の強さや特性によって、いくつかの診断名に分かれていますが、本質的には同じ1つの障がい単位と考えられています。
ASD(自閉症スペクトラム)の特徴
自閉症スペクトラムは大きく分けて3つの特徴があり、人間関係だったり、コミュニケーションが苦手だったり、想像力に関係する障害の特徴だったりします。
自閉症スペクトラムの特徴
対人関係の障がい | ●人との関わりに無関心、関わりを避ける ●目が合いにくい ●一人遊びを好む |
コミュニケーションの障がい | ●表情が乏しい ●オウム返しが多い ●一方的にしゃべるなど会話に困難がある |
想像力の障がい (こだわり行動) | ●相手の気持ちを考えられない ●変化を嫌いこだわりが強い ●人の視線がわからない |
それぞれの症状の特徴
自閉症 | 1000人に1~2人の割合で発症します。女児よりも男児に多いとされ、その程度には大きな個人差があり、てんかん発作や睡眠障害を起こしやすいともいわれています。社会的対人関係やコミュニケーションで特徴が見られる傾向があり、知的障害がない場合には高機能自閉症と呼ばれます。【主な特徴】 ・目を合わせることが苦手 ・言葉の遅れやオウム返しがよくみられる ・多動である ・こだわりが強い ・意思を言葉にできずパニックをおこす ・要望がある場合相手を引っ張っていくクレーン現象がある |
アスペルガー症候群 | 男性の割合が4分の3ほどであるといわれています。自閉症によく似ていますが知的な障害はなく、高機能自閉症と同じように考えられる場合もあります。会話能力は正常であり、気付かれにくいケースもあります。特に想像力(こだわり行動)の点で特徴がみられます。【主な特徴】 ・社会的なルールの理解が苦手 ・場の空気が読めず、自己中心的と誤解されやすい ・相手を傷つけることを思ったまま言ってしまうことがある ・ジェスチャーやアイコンタクトを交えて会話ができない ・車や鉄道など特定のものに強いこだわりがある ・興味のあるものに対する集中力や記憶力に優れている ・本人が決めたルールを変えることを嫌がる |
小児期崩壊性障害 | 有病率は約0.01%で男児に多いとされています。2歳くらいまでは正常に発達するものの、その後対人反応障害がおこり、言葉がなくなるなどの退行がみられます。精神発達の退行は半年以内にストップすると言われていますが、自閉的な状態はその後も続くとされます。【主な特徴】 ・2歳以降に特性があらわれる ・言葉が出なくなる(有意味語消失) ・排便や排尿機能に問題が生じる ・運動能力の退行がみられる ・執着心が強くなる |
レット症候群 | 女児に起こる進行性の神経疾患。生後6カ月ころまでは正常な発達を見せるのが特徴。1万~1万5千人に1人の割合で発症し、生後6カ月~1歳半の頃に発症します。【主な特徴】 ・常に手をもむような動作をする ・知能や言葉、運動能力が遅れる ・手をたたく、手を口に入れるなどを繰り返す ・昼夜の区別ができず睡眠パターンが安定しない |
その他の広汎性発達障害 | 広汎性発達障害には、特定の診断基準を満たさないものの、さまざまな知的障害、行動障害、社会的関係上の問題が現れるケースも含まれます。特定の診断名が無い場合は、「特定不能の広汎性発達障害」と呼ばれます。 |
ASDでは、脳機能が原因の障害のため、完治は望めません。
そのため、多くの専門家が治療法や根本原因の特定の研究などを行っているが、いっこうに治療法は確立されません。
それぞれの特徴をしっかり理解してあげて、適切な対応や介助を行い、子供たちが健やかに過ごせる環境や耐性を作り出してあげてください。
いろんな場面での対応のポイント
ASDの子供たちと接していると、色々な場面に遭遇しますが、ケースごとの対応をまとめていきましょう。
自閉症スペクトラムの子供たちの支援ツールを提供しているサイトがありますから、興味が有る方はぜひ訪問してみてください。
特徴に合わせて理解できるようにする
一見するときちんと話を聞いているように見えても、なかなか言っていることを理解してもらえないことがあります。
そんな時は、絵や文字を使って視覚的に見せたり、指示をする時には具体的にかつ、簡潔に指示をすることできっと伝わります。
何かの行動をしている時に注意すると、パニックを起こしがちなので、支持や注意をする時には落ち着いてから、支持に集中できる環境を作ってあげてから支持するようにしましょう。
きちんとルールを決めてあげる
ASDの子供たちは、他の人の気持ちが理解できなかったり、自分の置かれている状況を理解できなかったりします。
また、自分が気に入ったルールなら素直に従う特徴もありますから、リストなどを作って具体的に指示を出したり、明確な予定を指示したりと、明確に分かりやすく指示を出してあげることで、子供たちもきちんと時間を守ったり、素直に行動してくれたりします。
パニックを起こす
とても感受性が豊かで、騒がしいところが苦手なので、パニックを起こさないように、普段の生活するスペースはできるだけ静かに過ごせる観葉を用意してあげてください。
もしパニックを起こしてしまったら、怒鳴ったり説得を試みるのではなく、子供の安全を確保しつつゆっくりと静になるのを待ちましょう。
無理に押さえつけたりすると、余計にパニックになってしまうので注意してあげてください。
こだわりが強い
こだわっているのは、ASDの子供たちが安心するための癖のようなもので、他の人に迷惑をかけるようなことでなければ、多少のことは大目に見てあげてください。
そのこだわっていることこそが、本人たちが安心できる部分なのですから。
感覚過敏の症状にも注意をしてあげてください
さまざまな感覚過敏の症状が現れますから、その感覚ごとの正しい対処をしてあげてください。
視覚過敏の対処法
視覚過敏の症状は、光を眩しがるのですぐにわかると思います。
そんな時には、サングラスを掛けてあげると落ち着きます。
また、視覚過敏の症状の中で本を読みにくいことがある場合には、アーレン・シンドロームを疑ってみてください。アーレン・シンドロームの場合には、アーレンレンズという特殊なレンズを着けたメガネを掛けることで症状が落ち着くことがあるようです。
アーレン・シンドロームの検査は、筑波大学心理・発達教育相談室で行っているようですので、そちらで相談なさってみてください。
相談窓口
開室曜日:月・火・木・金・土(祝日、年末年始などは除く)
受付時間:午前10時30分~12時、午後13時~16時30分
電話:03-3942-6850
参考ブログ記事
聴覚過敏の対処法
音の刺激に過敏になってしまうと、場合によっては吐いてしまうこともあります。
通常の耳栓や、ノイズキャンセリング機能のあるデジタル耳栓、防音用イヤーマフ等を使って、音から守ってあげてください。
触覚過敏の対処法
肌がチクチクして服が着られなかったりしますし、突然触られるとパニックを起こしてしまうこともあります。
着られる服を探して、一つ一つ試着しながら選ぶしかありません。
保護者の方ともよく相談して、ある服を着せるのではなく、準備をしておいてその子が着られる服をしっかりと準備しておいてください。
臭覚過敏・味覚過敏の対処法
この場合には、どんなにいい匂いのする食べ物だと感じられても、本人にしてみれば、ひどい味だったり、とても臭いにおいに感じてしまったりします。
偏食傾向が現れますが、食べることを無理強いするのではなく、食べれる者の中からきちんと栄養管理が出来るように、量や回数を調整してあげてください。
最後に最も注意すべき点
感覚過敏があれば、逆に感覚鈍麻の症状が出る子もいます。
感覚鈍麻の中でも特に、痛覚鈍麻には注意が必要です。
痛覚鈍麻の子供たちは、俗に言う無痛症に近い症状で、痛みに関する感覚がひじょうに鈍いので、頭を打ったのがわからなかったり、ビショビショの服の下で火傷をおっている場合でも、自分で気づくことが出来ませんから、廻りの安全をしっかりと確保しておく必要があります。
困ったときには
困ったときには、掛かり付けのお医者さんや、保護者の方、専門家などとしっかりと連携を取ったり、専門書などでしっかりと調べたりして、いつでも相談出来る環境を作ることで安心出来ると思います。
相談できるところをたくさん作っておいてくださいね。
こちらの本が大変評判がいいようです。
発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ (健康ライブラリー)